遺産分割協議とは?手順から遺産分割協議書の書き方を解説します
相続が発生した際に、相続人全員で誰がどの相続財産を相続するか決める話し合いを遺産分割協議といいます。
そして、遺産分割協議の内容を書面にした物を遺産分割協議書を呼びます。
このコラムでは具体的な遺産分割協議の手順や遺産分割協議書の作成のポイントを解説いたします。
特に、遺産分割協議書はどのように書いたらいいか迷われる方も多いかと思いますので、当事務所のサンプルも添付いたします。
遺産分割協議不要な場合
遺産分割協議は全ての相続で必ずしも必要になるわけではございません。下記に該当する場合は遺産分割協議は不要です。
1.相続人が1人の場合。
2.遺言書どおりに相続財産を相続する。
3.法定相続分で相続財産を相続する。
逆に言えば上記に該当しない場合は、遺産分割協議が必要になります。
現状、遺言を遺す方は多くはなく、法定相続分で相続することも少ないので、ほとんどの相続で遺産分割協議を行なうことになるのではないでしょうか。
遺産分割の手順
1.相続人の確定
↓
2.相続財産の確定
↓
3.遺産分割協議を行なう
↓
4.遺産分割協議書作成
おおまかに上記の手順でおこなっていきます。
1.相続人の確定
まずは戸籍を収集し相続人を確定します。
遺産分割協議は相続人全員で行わなければ無効になってしまいますので、戸籍は慎重に読み解く必要があります。
稀ではございますが、被相続人に認知していた隠し子がいたこともありました。当然その子も相続人ですので、遺産分割協議に参加させなければなりません。
必ず戸籍を収集し、相続人を確定させましょう。
戸籍の収集については下記のコラムに詳しく記載しておりますので、よろしければ参考にしてください。
2.相続財産の調査
遺産分割協議に記載する相続財産を調査します。
不動産・預貯金・有価証券などのプラスの財産はもちろん、債務(借金やローン)などのマイナスの財産も全て相続財産となります。
相続放棄をするかどうかもここで検討しなければなりません。
相続財産に漏れがあると、再度遺産分割協議を行なう必要がございますので注意してください。
調査方法については別のコラムにて解説したいと思います。
3.遺産分割協議を行なう
相続人、相続財産を共に確定したら遺産分割協議を行ないます。誰が、どの財産を相続するか話し合うことですね。
くどいですが相続人全員で行ないます。
ただし、相続人全員が一堂に会する必要はございません。電話でも手紙でもかまいませんので、相続人全員の合意があればOKです。
4.遺産分割協議書を作成
遺産分割協議で合意した内容を、書面にした物を遺産分割協議書と呼びます。相続全員が署名、ご実印で押印し印鑑証明書を添付します。
遺産分割協議書も全員が集まって署名、押印する必要はありませんので郵送で行っても大丈夫です。
また、遺産分割協議書は1通に相続人全員分の署名押印をまとめる必要はありません。
例えば相続人が3人の場合は、必ずしも3名分の署名押印を1枚の遺産分割協議書にまとめる必要はありません。
同内容の遺産分割協議書を3通作成し、3人がそれぞれ1通に押印すれば有効な遺産分割協議書となります。
3通の同内容の遺産分割協議書をあわせることで、有効に遺産分割協議が成立したと判断されることになります。
相続人が多数で遠方にいる場合などは、1通にまとめない方が円滑に遺産分割協議書が完成します。
遺産分割協議書の書き方
上記は当事務所で使用している遺産分割協議書のサンプルです。
遺産分割協議書には要件を満たさなければ無効になるというような、厳格な決まりはありませんが
最低限、「遺産分割協議書」とタイトルを付け被相続人の氏名、亡くなった日、誰がどの相続財産を相続するかは明確にします。
相続財産の記載方法は次項に説明いたします。
1.不動産
(戸建て) 所 在 座間市緑ケ丘十丁目 1100番地1 専有部分の建物の表示 敷地権の表示
|
不動産は最寄りの法務局で登記簿を取得し、正確に記載します。被相続人が持分で所有している場合は持分も記載します。
登記簿と遺産分割協議書に齟齬があると、相続登記がとおらない可能性がありますので慎重に記載する必要があります。
2.預金
預金 |
預貯金については、金融機関名・支店名・種目・口座番号を特定できるように書く必要があります。
同じ金融機関で複数の口座をお持ちの方もいらっしゃるので、しっかり特定しましょう。
3.株式
株式 |
株式については、証券会社名・支店名・口座番号・株式の銘柄・数量を記載する必要があります。
証券会社からの通知に、被相続人が取得している株式が記載されておりますので確認しましょう。
4.自動車
車名 トヨタ |
自動車については、車検証に記載されている車両番号・車台番号を記入する必要があります。
5.債務(借金・ローン)
・令和3年4月26日金銭消費貸借契約による株式会社橋本銀行からの借入金。 (当初借入金3,300万円) |
借金やローンなどの債務については、契約内容・債権額・債権者(貸主)を記載する必要があります。
ただし、債権者の同意がなければ遺産分割協議の内容に拘束されません。
つまり、債権者が同意しない限り、債権者は相続人全員に債務の返済を求めることができます。
事前に債権者に遺産分割協議の内容を確認してもらう必要があります。
6.遺産分割協議に記載のない相続財産
1.本協議書に記載のない財産及び後日判明した財産は相続人 司法 花子がこれを相続する。 |
遺産分割協議の際には認識していなかったが、後から相続財産が発見されることがあります。
再度、遺産分割協議するのは煩雑な場合は上記の文言を入れるのもよいと思います。
もちろん必ずしも入れる必要はありませんが、その場合は後から発見された財産も遺産分割協議をすることになります。
まとめ
遺産分割協議をする前段階としての、相続人の確定、遺産の調査が重要なポイントとなります。
どちらかに間違いがあると、遺産分割協議の無効や再度協議する必要がありますので大きな負担になってしまいます。
上記のポイントを慎重に確認してから、遺産分割協議をおこないましょう。
遺産分割協議書は書式は決まっておりませんが、相続財産は明確に特定する必要があります。
間違いがあると法務局や金融機関で手続きができず、相続人から訂正印をもらう事態になることもあります。
相続人同士の関係性によっては遺産分割協議の修正が効かないこともございますので、ご心配な場合はお気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
司法書士 近藤 雄太