2023年改正予定 相続登記の義務化
2021年2月10日法制審議会にて、長年登記名義が変更されず放置されている所有者不明土地の解消策として、相続登記の義務化などを盛り込んだ民法と不動産登記法の改正要綱が法務大臣に答申されました。
所有者不明土地は2016年時点で約410万ヘクタールあり、九州(土地面積:約367万ヘクタール)以上に存在するという衝撃的な報告がなされております。
所有者不明土地の主な原因としては相続登記をせず放置、所有者が住所を変更しても住所変更登記をしないことのようです。
その結果、相続登記をしていない物件の場合、固定資産税の請求はいつまでも故人名義で送達されることになり不都合が生じ、また売買契約を結ぼうとしても、被相続人はすでに死亡しているため、当然のことですが、亡くなった人と売買契約など締結できず不動産取引にも支障が生じてしまいます。
例えば不動産会社で有効活用できそうな物件を見つけたが、名義人は亡くなっているようで交渉相手を探すこともできず、断念せざるを得なくなってしまいます。
そこで、きっちり相続登記をしてもらうことで、所有者を明らかにしておかなければ経済取引にも支障をきたし兼ねないため、義務化しようとするものです。
現行法では相続登記や住所変更登記は、いつまでにしなければならないといった期限がなく放置していても罰則はありません。
そのため、現在お住まいになられているご自宅などは相続登記を入れる方が多いですが、処分価値の低い山林などの土地はそのまま何十年も放置している方も少なくありません。
現行法でも相続登記をせず放置するデメリットは多々ありますのでそれは別の記事にてご紹介したいと思います。
相続登記義務化のメリット
義務化するメリットとして、所有者を明らかにできることから、固定資産税などの税の請求宛が明確になります。
さらに、所有者は現在生存している人物であり、不動産名義人と実質所有者を一致させることにより、土地・建物による有効活用がやりやすくなり、不動産に関する経済活動として、契約書関係において円滑に事を進めることができます。
また、今度の法制審議会の中間報告では、義務化されたとき、相続登記を行った相続人に対し、減免措置などの案も出ているようです。
相続登記義務化改正案
改選案は2021年3月に閣議決定されて国会で成立した後、2023年度に施行される予定です。
相続登記義務化と住所変更登記は下記のとおり罰則も設けられるようです。
1.相続登記義務化
被相続人名義の不動産について、相続人は自身が相続したことを知った時から3年以内に相続登記をしなければならなくなります。正当な理由なく相続登記を怠った場合は10万円以下の過料が科される予定です。
2.住所変更登記義務化
個人や法人が登記簿上の住所及び氏名が変更してから2年以内に住所変更登記をしなければ5万円以下の過料が科される予定です。
以上が登記に関する今回の主な改正点になります。
現行法上も不動産登記では表題登記という、土地や建物の所在や面積などの登記があるのですが、これについては登記しなければならない義務があり、怠ると10万円以下の過料がかかることにはなっています。
しかし、実際は表題登記の登記義務については形骸化していて、表題登記を怠った場合に過料を払ったという話しは聞いたことがありません。
あくまで私見ですが、今度の法律改正による相続登記の義務化については登記を怠った場合の過料はしっかり請求がくると思います。最初から甘くして制度を形骸化するようなことはしないと考えられます。
相続登記の費用
相続登記費用にどれぐらい必要になるかですが、不動産の個数及び評価額や相続人の人数によって異なりますが、一般の戸建てやマンションの方は30万見積もっていただければ安心ではないかと考えられます。
まず登録免許税として、不動産の名義変更をする際に国に税金を納めます。金額は固定資産税評価証明書の評価額の0.4%です。
相模原周辺の方でだいたい8万円~15万円ぐらいの方が多いです。
そして、相続手続きに必要な戸籍等の書類収集に約3万円、司法書士報酬が4万円~10万円ぐらいなるかと思います。
もちろん相続手続きの難易度や不動産の個数、評価額によって大きく増減する可能性はありますのであくまで目安とお考えください。
司法書士に頼んだ場合の相続登記費用は下記コラムを参考にしてください。
住所変更登記
住所変更登記は相続登記と異なり非常にシンプルです。およそ2万円前後になるかと思います。
登録免許税が不動産1個に対して1,000円ですので、一般的な戸建てやマンションは2,000円になります。
そして司法書士手数料が10,000円前後になるかと思います。
法律改正前の現在でも相続登記を放置した場合には様々なデメリットがあり、いずれは必ず義務化されますから、ペナルティーのことも考え、義務化の前に早めに手続きに着手するのがよいでです。
この記事を読んでいただき、法律改正を知ったきっかけにいつか相続登記をしようと思っていた、住所変更登記をする必要あるか不安だ、といったお客様はお気軽に無料相談にてご相談ください。
この記事を書いた人
司法書士 近藤 雄太