権利証がない!相続登記できるの?
「権利証がないのですがどうしたらよいですか?」、「権利証を無くしてしまったのですが相続登記できますか?」
たまに上記のような権利証の紛失について問い合わせがございます。
結論からですが権利証が無くても相続登記は原則問題なくできます。
ただし、例外的に必要な場合もございます。
それはどんな時か、その場合の対処法などを解説いたします。
そもそも権利証とは何なのか、どんな時に使うのかも合わせて説明したいと思います。
権利証とは
権利証とは売買や相続などで不動産を取得した際に法務局から受領する書類です。
再発行ができない唯一無二の書類ですので、持っていれば自身が不動産の所有者であるという強い推定が働きます。
権利証は冒頭のイラストのような物で、A4かB5サイズも多いです。
タイトルに「登記済権利証」と書かれており、司法書士名や司法書士事務所が記載されていることが一般的ではあります。
中は申請した登記の内容が記載されており、登記官による「登記済」の朱印が押印してあります。
ではどのような時に権利証を使うのか。
一般的に多いのは不動産を売却などで手放す時や金融機関から借り入れをして不動産に担保に入れる場合です。
不動産の所有権を失ったり、金融機関へ担保に入れたりするなど所有者にとって不利益な登記を申請する際に権利証が必用になります。
それ以外で日常生活に使うことはまずありませんし、権利証を紛失しても所有権を失うというわけではございません。
権利証から登記識別情報へ
平成17年の不動産登記法の改正により上記の権利証は発行されることがなくなりました。
権利証に代わりに「登記識別情報」という物が発行されるようになりました。
※従来の権利証が無効になったわけではございません。今後発行される物が登記識別情報になったということになります。
法務省のホームページにあります登記識別情報のサンプルを下記に貼っておきますので、クリックすれば見れますので。
(ダウンロードに少し時間かかるかもしれません。)
https://www.moj.go.jp/content/001131098.pdf
よって、平成17年以降に被相続人が不動産を取得したとすれば権利証ではなく、登記識別情報
の可能性が高いです。
相続登記に権利証が必要な事例
冒頭で申し上げたとおり相続登記に原則権利証は必要ありません。
ただし、権利証が必要な2つの事例がありますので解説いたします。
1.被相続人の住所のつながりがつかない場合
法務局では住所と氏名の一致をもって同一人物と判断します。
よってまずは被相続人の住民票の除票を取得いたします。
※住民票の除票とは亡くなった人の住民票のことです。本籍入りで取得しましょう。
例えば甲野太郎を被相続人とした時に、登記簿で「相模原市1丁目1番1号」の甲野太郎が記載されており、住民票の除票も「相模原市1丁目1番1号」の甲野太郎であれば問題なく相続登記を進められます。
ところが登記簿では「相模原市1丁目1番1号」の甲野太郎で住民票の除票では「町田市一丁目1番1号」の甲野太郎だった場合は同一人物とはみなされません。(同性同名の可能性があるため)
この場合、住民票の除票に前住所である「相模原市1丁目1番1号」から「町田市一丁目1番1号」に住所変更した旨が記載されていればつながりがつくので問題ないのですが、被相続人が何回も引っ越しをした方で住民票の除票や戸籍の附票をとっても住所のつながりがつかない場合が問題となります。
※戸籍の附票とは本籍地で戸籍と一緒に保管されている書類で、戸籍が作られてから(またはその戸籍に入籍してから)の住所の履歴が記録された書類です。
あるいは、そもそも住民票の除票が取得できないケースもあります。
(原則住民票の除票は5年経過すると破棄されてしまうため取得できなくなります)
上記のように、登記簿記載の住所と被相続人の住所のつながりがつかない場合やそもそも住民票の除票が取得できない場合に権利証(登記識別情報)を提出すれば相続登記は受理されます。
これは権利証があれば被相続人に間違いないだろうという推定が働くためです。
やはり、権利証はとても大事な書類ですね。
2.遺贈の登記をする場合
遺言により相続人以外の第三者に不動産を渡す場合は相続ではなく「遺贈」となります。
遺贈で登記申請をする場合は、受遺者と遺言執行者又は遺言者の相続人全員と共同で登記申請を行います。
この場合は権利証が必要書類になります。相続登記では原則権利証が不要でしたが、遺贈登記の場合は権利証が必要になりますので注意してください。
もし、権利証が紛失している場合は代替え措置で登記申請する手段がありますので司法書士への相談をお勧めいたします。
まとめ
1.権利証が紛失していても原則相続登記ができます。
2.相続登記で権利証が必要になる例外として、被相続人の亡くなった時点の住所と登記簿に記載の住所がつながらない場合です。
3.遺言により相続人以外の第三者に承継させる場合を「遺贈」といいます。この場合の登記申請には権利証が必要になります。
4.平成17年の不動産登記法の改正により権利証は発行されなくなりました。その代わりに発行されるようになったのが「登記識別情報」です。
この記事を書いた人
司法書士 近藤 雄太