遺言は遺す必要があるの?特に遺言を書いた方がよい人

遺言と聞くとまだ早いとか縁起が悪いなどと敬遠される風潮があるため、なかなか勧めるのが難しいところはありますが、個人的な考えですが遺言は生命保険と同じで残された家族のためにも必須とまで考えております。

遺言の作成するメリットとして、①相続人同士の争いを防げる。②生前のうちに遺産の分け方を決めておける。③相続手続きに必要な書類が少なくてすむ。④相続人以外にも財産を渡すことができる。?相続人が遺産分割協議をする必要がない。など多く挙げることができます。

反対に遺言を書くデメリットは特にありません。強いてあげれば多少の手間と少しばかりの経費(紙や文房具)がかかることぐらいでしょうか。デメリットとは言えないのではないでしょうか。

このように遺された家族のためには遺言はメリットでしかありません。その中でも特に遺言を書いた方がよい人も存在しますので、実際に当事務所に相談があった下記事例を基に解説していきます。

1.配偶者と未成年の子供がいる場合

この場合、相続人は配偶者と子の二人となり、相続分は2分の1ずつです。
仮に不動産の名義人である夫が亡くなり、不動産を妻名義にするには妻と子で遺産分割協議を行わなければなりません。

しかし、未成年者は遺産分割協議に参加できないため親権者である妻が子の法定代理人として遺産分割協議に参加する必要があります。
ところが、妻の立場と子の法定代理人としての立場がバッティングするため、公平を期すために家庭裁判所に子供の特別代理人を選任し、妻と子の特別代理人とで遺産分割協議を行なう必要があります。

子供の特別代理人には司法書士や弁護士などの専門家が選任されることがありますので、費用と時間がかかってしまいます。
遺言があれば特別代理人を選任するなどの煩わしい手続をすることもなく、また集める書類も最小限に抑えつつ、時間も短縮して妻に相続できますので、遺された家族としても安心ではないでしょうか。

蛇足にはなりますが、私(近藤)もこのパターンに該当しますので30代ですが遺言を遺しております。

2.子供がいない夫婦間での相続

このケースで夫が亡くなった時、第2順位である夫の両親も亡くなっていれば、第3順位の兄弟が相続人となりますので、妻と夫の兄弟で遺産分割を行わなければなりません。
相続持分は妻4分の3、兄弟で4分の1それぞれ持つことになります。

実際のところ配偶者の兄弟とは関係が希薄な方が多く、兄弟が亡くなっている場合はその子である姪や甥が相続人になります。

こうなると、相続人もかなりの人数になり遺産分割協議が難航することも多く、中には相続分として金銭を要求されることもありますので、遺された配偶者の負担は大きなものとなります。
遺言があれば遺産分割協議をすることがありませんので、上記のような煩わしい手続きをすることなくストレートに配偶者へ相続させることが可能となります。
当事務所でご依頼いただいた方でも遺言さえあれば。。と悔やまれる事例も少なくはありません。

子供のいない夫婦間では遺言は絶対に遺すべきと考えられます。

3.離婚をして前配偶者との間に子供がいる場合

離婚した夫婦は法律上他人と扱われますので、離婚後に元夫婦の一方が死亡したとしても、元配偶者には相続権はありません。

しかし、離婚した夫婦間に子供がいた場合、その子供は相続権があります。離婚して元配偶者に親権をとられたとしても親子の縁が切れるわけではありませんので、子は常に相続人になります。
問題となる場合は、離婚後に再婚して新たな家庭がある中で相続が発生した場合、元配偶者との間の子も相続人として遺産分割協議に参加させる必要があるということです。

例えば、夫が亡くなり相続が発生し、相続人は妻と子だが夫は再婚のため前配偶者との間に子がいれば、相続人は妻と子そして前配偶者の子の3人になるため、前配偶者の子も遺産分割協議に参加させる必要になります。

この場合、夫も前配偶者との子との関係が希薄なことも多く、まして妻と子にいたっては面識はおろか夫が亡くなって初めて知ったといった事例もありました。

当事務所もこういった相談をうけ、遺産分割協議の調整として受任したが、前配偶者の子から相続権分を金銭で要求され、妻が数百万支払うことで居住不動産を守れたといった結果でした。
紛争にはなりませんでしたが、依頼者は精神的、経済的に大きな負担を負ってしまったので、遺言があればもっと円滑に相続ができたのにと悔やまれました。
前配偶者との間に子がいる方も絶対に遺言を遺すべきと考えられます。

4.財産を残したい相手が決まっている場合

遺言がなければ相続人は配偶者と第1順位に子、第2順位に親、第3順位に兄弟となります。

例えば、長男の嫁が献身的に看病してくれるので少しでも相続時に財産をあげたいと考え生前に言葉で伝えたとしても、長男の嫁は相続人ではないため、遺言がなければ財産を渡すことはできません。逆に遺言があれば相続人以外の人にも相続財産を渡すことが可能となります。

また、同じ相続人でも長男には生前に事業資金や居住用不動産の援助をしたから、相続時には二男に多くの財産を相続させたいといった希望も遺言を遺すことにより実現させることが可能となります。

このように遺言を遺すことにより、自分の意思で相続させたい人に財産を渡すことができ相続人同士の争いも未然に防げる可能性が高くなります。

まとめ

ここまでお読みいただければ、遺言を書くべき理由も多少わかっていただけたかと思います。
遺言は必ず書くべきです。書くことで損をする人はいませんが、書かないことで残された家族間で紛争が生じたり、多大な負担を強いることになります。

また、残された家族たちも故人の最後の意思表示である遺言を最大限尊重したいと考えるのは自然なことだと思います。ですから、どんな人であれ、遺言は書いておくことをお勧めいたします。

参考に自筆証書遺言と公正証書遺言の比較をコラムにて解説いたしました。興味ある方は下記リンクをご確認ください。

自筆証書遺言と公正証書遺言の比較

 

 

この記事を書いた人
司法書士 近藤 雄太

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